2005年8月16日11:46頃発生した宮城県沖を震源とする地震で,最大かつ唯一の震度6弱を記録した宮城川崎町震度計の強震記録が回収されたので,その性質,破壊力について報告する.これ以外の記録,宮城川崎町震度計周辺の被害状況については,リンクを参照. 観測点の位置は,KiK-net川崎(MYGH07)の350mほど南東である.
同地震本震で波形が公開された防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netによる強震記録のうち,震度5強以上のもの,既往の強震記録と比較して,地動最大加速度,地動最大速度および計測震度を以下に示す.
観測点名 PGA PGV 計測PGA,PGV,計測震度ともに他のいずれの強震記録より遥かに(PGA,PGVは他の最も大きい記録の2倍程度,計測震度は0.5程度)大きいことがわかる.既往の強震記録と比較するとPGAは,1Gを越えて1995年兵庫県南部地震のJR鷹取,2004年新潟県中越地震のJMA小千谷以上であるが,PGVは遥かに届かない.タイプとしては,2003年三陸南地震のJMA大船渡の記録に似ていて,0.5秒以下の極短周期が卓越した地震動であることが予想される.
加速度波形(水平2方向ベクトル和最大方向)を示す.0.5秒以下の極短周期が卓越した地震動であることがわかる.
弾性加速度応答スペクトル(減衰定数5%,水平2方向ベクトル和)を震度5強以上の本地震の他記録,1978年宮城県沖地震の東北大学の記録(mygthu)と比較して以下に示す.宮城川崎町震度計(KWSsnd)のスペクトルは本地震の他記録より格段に大きいが,その形状は他記録と同様に0.5秒以下の極短周期が卓越し,よく似ていて,1秒程度が卓越し建物の大きな被害を引き起こす1-2秒にもパワーがある1978年宮城県沖地震の東北大学の記録(mygthu)とは,異なる性質のものと言える.
同様に,弾性加速度応答スペクトル(減衰定数5%,水平2方向ベクトル和)を,過去の強震記録と比較して以下に示す.
上で述べたように0.5秒以下の極短周期が卓越しており,建物の大きな被害を引き起こす1-2秒の部分は1995年兵庫県南部地震のJR鷹取,2004年新潟県中越地震のJMA小千谷,2005年福岡県西方沖地震の福岡舞鶴より遥かに小さく,震度6弱を記録したが周辺にほとんど被害がなかった2003年三陸南地震のJMA大船渡と同レベルであることがわかる.
提案する算定法による震度を以下に示す.提案する算定法による震度は,0.1-1秒(計測震度=人体感覚,室内物品の動きに対応),0.5-1秒(建物の中小被害に対応),1-2秒(建物の大きな被害に対応)という3つの周期帯ごとの地震動強さを震度という共通の指標で見ることができるものである.
観測点名 計測 0.1-1秒 0.5-1秒 1-2秒 提案被害に結びつく1-2秒より0.1-1秒という計測震度が対応する短周期における値が大きく,震度の大きさの割には被害を引き起こさない短周期地震動であったことがわかる.そして,これは実際の状況とも対応している.
謝辞強震記録は,防災科学技術研究所,気象庁,鉄道総合技術研究所より提供いただきました.また,観測点位置図はKiK-netのページより転載させていただきました.