3/15'11

ニュージーランド クライストチャーチの地震で発生した地震動と被害調査速報

飯塚裕暁,境有紀,纐纈一起
筑波大学構造エネルギー工学専攻,東京大学地震研究所
  震度6強を記録した全ての強震観測点と6弱を記録した一部の強震観測点周辺の被害状況の調査,具体的には,観測点から半径200mの円内の建物(駐車場,作業所,倉庫などは被害率算定の対象外,ただし調査は行う)の被害レベル,構造種別,階数の全数調査を行った.ただし,今回は,特に家屋について,外見から木造と組積造の区別が難しく,外壁は組積造のように見えても構造躯体は木造,あるいは,一部木造,一部組積造となっているものもあるので,現段階では両者の区別はせずに報告する.


震度5強以上の観測点の位置

 調査した観測点は,周辺にある程度の建物が存在している以下の7点とした.

REHS(震度6強)
CCCC(震度6弱)
PRPC(震度6強)
HPSC(震度6弱)
SHLC(震度6弱)
HVSC(震度6強)
LPCC(震度6弱)


 各観測点の弾性加速度応答スペクトル(2方向ベクトル和)を以下に示す(地震動に関するより詳しい情報はこちら).

弾性加速度応答スペクトル作成中

また,弾性加速度応答スペクトル(減衰定数5%,水平2方向ベクトル和)を大きな被害を引き起こした1995年兵庫県南部地震の強震記録と比較して示す.

弾性加速度応答スペクトル作成中

 建物の大きな被害に結びつく1-1.5秒応答を見ると,REHSは,1995年兵庫県南部地震のJR鷹取や葺合ほどではないが,JMA神戸より大きな値となっている.そして,これは実際の被害状況(全壊・大破率15.5%)からも確認される.

 次にJMA神戸に匹敵する1-1.5秒応答をもつCCCCについては,全体建物数が少ないが,大きな被害を受けた建物が見られた.一方で,ほぼ同じ1-1.5秒応答のPRPC周辺では,大きな被害を受けた建物は見られなかった.これは,建物のほとんどが平屋住宅だったことが影響しているのかもしれない.

 むしろ,建物総数は少ないもののHVSCの方で大きな被害を受けた建物が見られた.この記録は,短周期が卓越しているが,1-1.5秒応答もかなり大きい.しかし,CCCCやPRPCほどではなく,今後の検討が必要と思われるが,建物の中に組積造建物と思われるものが含まれていることが関係しているのかもしれない.

トップページへ