の2つの方法があり,様々な社会的事情を勘案して現在はb)に力を入れています.取り組んでいる数多くの研究テーマの1つに震度の算定法がありますが,これは,震度が実際の被害と対応していれば,構造物の耐震性は現状のままだとしても,地震直後にその被害程度を正確かつすばやく把握し,速やかな対応をすることによって,人命の損失を最小限に食い止められるのではないか,と考えているからです.そして,提案する震度算定法には,非線形共振という構造動力学の概念(これも提案しているものです)が使われています.
つまり,目的は「構造物を対象とした地震防災」で(なぜなら人命が失われる原因の多くは構造物の倒壊だからです),用いるツールは「構造動力学」を主体にしている,ということです.言い換えると,地震動と構造物被害の関係を構造動力学を用いて把握し,それを構造物被害に伴う人命の損失を減らすことに繋げることを目的としているわけです.必然的に発生する地震動を的確に評価予測することも対象になってきます.「地震による構造物被害に伴う人命の損失を減らす」ためには,地震そのものから構造物に至る幅広い分野に取り組む必要があり,この研究室ではそれを実行しているということになります.地震防災に対してそういう取り組み方をしている研究室はほとんどないので,そういうこだわりが研究室の名前に現れているとも言えます.
そういうことを勘案して研究室の名前をつけましたが,要は,研究室名の前半が「目的」で後半が「手段」になっているわけです.目的が手段より重要なので先に来ています.また,厳密には目的は地震防災全体ではなく「構造物を対象とした」地震防災ですが,後半の「手段」でそれが類推できる「仕組み」になっています.
当分は「地震による構造物被害に伴う人命の損失を減らすための研究」を続けていく方針です.目的が明確な以上,目的が手段に優先するのは当然の成り行きなので,今後用いる手段が構造動力学のみでなくなれば研究室の名前は変わっていく,ということになります.ですが現段階では全てのテーマが何らかの形で構造動力学に関わっているのでこの名前になっています.
蛇足ですが,なんで「構造動力学」にそんなに(でもないが)こだわっているのかというと,まあ大した理由でもないのですが,教員(境有紀)が筑波大の公募に応募したとき,募集分野が「構造動力学」分野だったので,採用していただいたことに義理立てしているようなところもなきにしもあらずです.
※構造動力学:地震動などの時間的に変動する外力に対して,建物などの構造物がどう挙動するかを調べる手法について検討する学問分野
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