地震被害調査方法と地震動解析

 大地震,具体的には,震度6弱以上を記録した地震が発生したときには,地震発生後,速やかに地震動の解析を行い,提案している解析方法を用いて被害推定を行って公表しています.そして,現地に入って被害調査を行い,その調査結果を即日公開しています.

 被害調査の方法は,強震観測点周り(半径200m以内)の建物と対象とした全数調査です.この方法をとっている理由は

1. 地震動の記録が得られている
2. 現地の状況がより正確に伝わる
3. 地震動の性質と構造物被害の関係を検討するための強震観測点周りの被害データを収集し後世に残す

の3つです.

 まず,1.については,建物が被害を受けたとき,あるいは,受けなかったとき,どれだけの強さのどういう性質の揺れだったかがわからなければ,なぜ被害を受けたのか受けなかったのか,具体的には,ある建物が大きな被害を受けていたときにそれが地震動が強かったからなのか,建物に問題があったのからなのかといった検証をすることができません.そういう意味では,揺れの記録がある,強震観測点周りのデータはとても貴重なものです.

 2.については,例えば,大きな被害を受けた建物を探して,それらだけを集めて報告すると,まるで,全ての建物が大きな被害を受けていて,現地が壊滅状態であるかのような印象を与えます.そういうことを避けるためには,全体を万遍なく調査する必要がありますが,一研究室では到底不可能です.そこで,「強震観測点周り」という,エリアは限定されているが,ある意味「任意」に選ばれた場所を被害を受けた受けていない関係なく万遍なく報告することでより現地の状況が伝わると考えました.

 3.については,言うまでもありません.地震動の性質と構造物被害の関係を検討するためには,地震動データと構造物被害データが必要になりますが,両方が揃ったものはまだ限られています.地震動は数百m離れれば全く違うものになることもあり,強震観測点周辺の建物被害データはとても貴重なものとなります.建物が被害を受けたとき,あるいは,受けなかったとき,どれだけの強さのどういう性質の揺れだったかがわからなければ,なぜ被害を受けたのか受けなかったのか検証することはできません.大地震は何十年,何百年,あるいは,何千年というスパンで起こるもので,こういう貴重なデータを後世に残しておくことは,とても重要なことと考えています.

 そして何より,研究の目的は地震被害を軽減することにありますから,その現場を直にこの目で見ることは何よりも重要です.テレビ画面やPCをいくら眺めていても現場の真の姿はわかりません.言い方を変えると,我々の研究室では,被害を受けた建物だけを調査するのではなく,強震観測点周辺を万遍なく調査し,真の現場の様子がわかるようなレポートをするように心がけています.

 最大震度5弱以上を記録した地震が発生した場合は,地震動の破壊力,被害推定の観点からの地震動解析レポートのみを公開しています(地震動解析レポートのみがあるものはこちら).

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