11/29'2004
         釧路沖の地震(2004/11/29)の地震動
             
             境有紀(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
              大月俊典(筑波大学第三学群工学システム学類)
              小杉慎司(筑波大学第三学群工学システム学類)
 
地震発生日時 : 2004年11月29日 3:32頃
震源位置   : 釧路沖
深さ     : 50km(暫定値)
マグニチュード: 7.1 (暫定値)
 
防災科学技術研究所によるK-NET, KiK-netの強震記録を用いて発生した地震動
について検討した.震度5強以上を記録した13点について地動最大加速度(PG
A),地動最大速度(PGV),計測震度を表1に(PGA,PGVは水平2方向ベクト
ル合成),計測震度の分布を図2に示す.K-NET納沙布,KiK-net鶴居東の2点
で震度6弱を記録
している.
 
表1 計測震度(Ij),地動最大加速度(PGA),地動最大速度(PGV)
 
code  観測点名  Ij   PGA    PGV
            (cm/s2) (cm/s)
HKD074 納沙布  5.51  587.35  28.996
HKD071 厚床   5.11  403.97  17.884
HKD080 弟子屈  5.04  463.01  25.160
HKD078 塘路   5.08  340.89  30.753
HKD072 落石   5.10  293.45  31.778
HKD068 上西春別 5.17  256.50  32.657
HKD077 釧路   5.34  265.82  33.167
HKD070 本別海  5.13  218.48  27.620
HKD066 標津   5.25  240.08  32.551
KSRH06 鶴居東  5.68  774.18  33.551
KSRH04 標茶南  5.22  407.31  41.746
KSRH10 浜中   5.06  429.60  22.240
KSRH02 阿寒南  5.25  272.01  32.337
 

            図2 計測震度分布図 
 
震度6弱を記録したK-NET納沙布,KiK-net鶴居東の加速度波形(水平2方向合
成最大方向成分および上下成分)を図2に,表1の観測点の弾性加速度応答ス
ペクトル(水平2方向ベクトル合成,減衰定数5%)を図3に,過去の地震と比
較して図4に示す.
 
水平2方向合成最大方向成分
上下成分
         K-NET納沙布
水平2方向合成最大方向成分
上下成分
         KiK-net鶴居東
          図2 加速度波形
    
    
図3 弾性応答スペクトル(水平2方向ベクトル合成,減衰定数5%)
    
図4 弾性応答スペクトル(水平2方向ベクトル合成,減衰定数5%)の
   過去の地震による強震記録との比較
 
2003年5月26日に発生した三陸南地震と,2004年9月5日に発生した紀伊半島南
東沖の地震
2004年10月23日に発生した新潟県中越地震と同様に0.5秒以下が
卓越した短周期地震動であることがわかり,建物の大きな被害を引き起こす
1-2秒応答は非常に小さい.
 
提案する震度算定法による0.1-1秒,0.5-1秒,1-2秒の3つの周期帯に対応し
た震度を見ると(表2),建物被害に対応した1-2秒震度より計測震度(人体
感覚)に対応した短周期の0.1-1秒震度が大きくなっている.また,これら3
震度を総合的に評価する提案する算定法による震度(分布図を計測震度と比較
して図5に示す)を見るといずれも5強以下となっている.特に計測震度で6
弱を記録した2点は提案する算定法だと5弱と2ランク下になっている.よっ
て計測震度は震度6弱に達しているが,震度6弱の想定する家屋の全壊などの
被害は生じていないと予想される.
 
     表2 0.1-1秒震度,0.5-1秒震度,1-2秒震度,提案震度
 
code  観測点名      0.1-1秒震度 0.5-1秒震度 1-2秒震度 提案震度
HKD074 納沙布        5.40    4.72     4.32   4.85
HKD071 厚床         5.07    4.44     4.02   4.98
HKD080 弟子屈        4.94    4.21     4.55   4.94
HKD078 塘路         5.12    4.56     4.37   4.99
HKD072 落石         5.03    4.37     4.36   4.99
HKD068 上西春別       5.13    4.76     4.75   5.03
HKD077 釧路         5.38    5.08     4.54   5.15
HKD070 本別海        5.08    4.81     4.70   5.04
HKD066 標津         5.19    4.80     5.00   5.04
KSRH06 鶴居東        5.44    4.60     4.69   4.70
KSRH04 標茶南        5.32    4.90     4.71   5.05
KSRH10 浜中         5.00    4.35     4.10   5.00
KSRH02 阿寒南        5.20    4.74     4.74   5.01
<以下過去の地震>
  地震     観測点
1995年兵庫県南部 JR鷹取   6.10    5.78     6.63   6.63
1995年兵庫県南部 葺合    6.15    5.90     6.40   6.40
2003年三陸南   JMA大船渡  5.67    4.97     4.73   4.97
 

          (1) 計測震度

      (2) 提案する算定法による震度
          図5 震度分布図
 
謝辞
防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netの強震記録を使用させていただきました.
1995年兵庫県南部地震のJR鷹取,葺合はそれぞれJR総合技術研究所,大阪ガス
より提供していただきました.JMAの強震記録は気象庁より提供していただき
ました.
 
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