10/25(月)18:00頃の全国ネット放送について
 
10/25(月)18:00頃,全国ネットで放送された私の「木造住宅は倒壊すると生存
空間が残らない」という発言に関して,木造住宅の建設を行っておられる建設
会社から苦情のメールが届きました.確かに誤解を招きやすい点もありました
ので,ここで発言の真意について述べさせていただきます.
 
私の発言の真意は,文字通り「木造住宅は倒壊すると生存空間が残らない」と
いうことです.ですから,木造住宅が例えば鉄筋コンクリート造と比べて性能
が低いとか,倒壊しやすい,ということは述べていませんし,事実ではありま
せん.「木造住宅は倒壊すると生存空間が残らない」が,倒壊しなければ充分
な耐震性能を有していると言えます.今回の被害調査でも,倒壊した木造家屋
は全て非常に古いものでした.
 
しかしながら,今回の地震は,家屋の大きな被害に結びつく性質の地震動では
ありませんでしたので非常に古い家屋が倒壊しましたが,例えば,1995年兵庫
県南部地震のような建物に大きな被害をもたらす地震動,具体的には1-2秒に
パワーのある地震動が来ればある程度古い木造家屋には被害が生じてしまうと
思います.そして,木造家屋は「倒壊すると生存空間が残らない」ケースが多
いのも事実です.実際,1995年兵庫県南部地震で亡くなった方の非常に多くは,
古い木造家屋の倒壊によるものでした.
 
しかしながら,これも1995年兵庫県南部地震のデータですが,建物の倒壊率は
木造家屋も含めて全ての建物について,1981年以前と以後で全く異なったもの
であるのは周知の通りです.1981年以降に建設された建物は木造家屋も含めて
倒壊した建物は非常に少ないものでした.
 
ですから,これから木造住宅を建設する場合は,ちゃんと設計施工されるもの
であれば,どんな地震に対しても安全とまでは言えませんが,少なくとも1995
年兵庫県南部地震の地震動に対して倒壊する確率は非常に低いと言えます.し
かし逆に言えば,1981年以前に建設された木造家屋は倒壊してしまうことも,
そして「木造住宅は倒壊すると生存空間が残らない」ケースが多いので,何よ
りも重要な人命を奪ってしまうということもありうるということです.ですか
らそういう家屋,建物にお住まいの方は是非一度耐震診断を受けていただき,
耐震性能が充分でなければ耐震補強を行うなり,対策を取っていただければと
思います.
 
確かに地震は滅多に来ませんが,来てしまうと一度に多くの人命を奪ってしま
うとても怖いものです.1981年以前の古い木造家屋にお住まいの方は,是非一
度耐震診断を受けていただくことをお勧めします.自治体によっては無料で行
っているところもありますので,一度問い合わせてみてください.
 
またここでついでに述べさせていただきますと,1995年兵庫県南部地震で倒壊
した木造家屋はその多くが1階が潰れたものでした.このことは,逆に言うと
2階にいればたとえ1階が潰れて倒壊しても命を落とす確率はかなり減ったと
いうことです.1995年兵庫県南部地震は未明に発生したため,1階に就寝中の
方が多く亡くなってしまいました.ですから,寝室を1階にしておられるのな
らせめてそれを2階にするだけでも,それで必ず大丈夫というわけではないで
すが,大地震が来て命を落とす確率は下がると言えます.