世界最小?の加力試験

 10年くらい前からモルタルに繊維を混入したHPFRCCを用いた超縮小模型の開発を行っています.これができれば,1/20〜1/30サイズで試験体を作製できるので,地震動をパラメータとした振動実験ができるのではないか,という目論見です.超高層建物の振動実験だってできます.ポイントは,やはりスケール効果で,このサイズで実大の復元力特性や破壊性状をいかに再現するかというのが大きな課題となっています.

 開始当初,鉄筋にねじ鋼,横補強筋の代わりに繊維(の入ったモルタルであるHPFRCC)を使うことで,驚くほど実大の復元力特性や破壊性状を再現し,順調な滑り出しだったのですが,実際に地震動をパラメータとした振動実験を行おうとする試験体を作ろうとすると,ねじ鋼にロットのばらつきがあったり,HPFRCCを繊維量を変えて狙った強度で打つことは,やはり大変で,10年の時が流れました.

 一番難航したのが鉄筋で,同じ学域の金久保先生に模型用異形鉄筋というのがあることをJCI見つけてきていただいて試したりしたのですが,これもロットによるばらつきがありました.そこで,今は,ロットが同じ丸鋼をアムスラー試験のチャックで使う板で挟んで加工しパテを塗って異形鉄筋を「作る」ことにトライしています.

 しかし,これも付着引き抜き試験ではOKでも,曲げせん断試験をやると鉄筋が滑って履歴ループが痩せるなどなかなかうまく行かず,意を決して,本格的に付着性能評価試験,具体的には,実大でもほとんど例がない,正負交番繰り返しの付着試験を行うことにしました.今まさに実験中で,結果は順調に出ているのですが,その加力装置というのが,例によって,技術職員の小島さんの職人技によるところが大で(金久保研の浅野君も大分手伝ってくれたようです),ほんとにいつも感謝というか敬服すらするのですが,ふと,これって鉄筋コンクリート造を対象とした構造試験として世界最小?の加力試験かもと思った次第です.

 試験装置は,こんな感じで↓

これだけ見てもようわからん,という感じだと思いますが,要は,コンクリートに埋め込んだ加工鉄筋の両端を左右交互に引っ張るわけです.荷重は,鉄塊にゲージを貼った即席ロードセルで測ります.で,注目すべき?は,その加力方法で,めがねレンチで,ボルトを回して加力します.そして,回しているのは,女子です↓

この写真で加力装置の小ささもわかると思います.つまり,そのくらい試験体も加力装置も小さくて,加力するのにも大きな力もかからないものとなっているわけです.そして,試験体の準備をしているもう一人も女子で↓

私の研究室では,どういうわけか,力仕事というか体を動かす実験担当が(今は)女子ということになっています.そう言えば,この実験を最初に担当してくれた徳井さん(当時,東大生研の中埜研の大学院生)も私の研究室の一期生で最初に縮小模型を担当した椎野さんも女子でした.

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