3/11'14
耐震性能が最低レベルの実大木造建物に
東日本大震災の強震記録を入力した振動実験

 対象とした建物は,1960年代建設を想定した現存する最低レベルの耐震性能しか有していない実大木造建物です.この建物に阪神・淡路大震災(1995年兵庫県南部地震)のJR鷹取を入力した実験は既に行われており,完全に倒壊しています.

 まず,東日本大震災の鹿島台震度計(震度6強)を入力したときの動画です↓


 激しく,かつ,長い継続時間に渡って揺れていますが,建物に大きな損傷はありません

 次に同じ震度6強の2007年能登半島地震 K-NET穴水を入力したときの動画です↓


 左手前の筋交いが座屈破断し(背面の同じ位置の筋交いも同様に座屈破断),大きな損傷(全壊)となりました.

 1F加振方向の荷重変位関係を示します↓

2011年東北地方太平洋沖地震
大崎市鹿島台震度計100% N10W
2007年能登半島地震
K-NET穴水100% N30W
最大変形角:1/32[rad] 最大変形角:1/10[rad]

※縦軸が2F重量を基に計算していたものから2FとRFの重要を基に計算したものに修正しています(4/25'14).

 最大変形が大きく異なっており,両者の損傷が全く違うことが確認できます.

 最後に,入力地震動の弾性加速度応答スペクトルを示します↓

減衰定数:5% 減衰定数:20%

 入力は弱軸一方向に平均方向を入力しており,その平均方向のスペクトルとなっています.

 これを見ると,大きな損傷がなかった東日本大震災の鹿島台震度計は,0.5秒以下の極短周期には大きなパワーをもっていますが,建物に大きな被害を与える1-2秒を見ると,2007年能登半島地震のK-NET穴水の半分以下であることがわかります.

 東日本大震災では,大きな津波被害が生じてしまいましたが,対照的に揺れによる被害は少なくて済みました.それは,建物の耐震性能が阪神・淡路大震災から向上したためではなく,この実験結果からわかるように,耐震性能が最低レベルの実大木造建物でさえ大きな被害を受けないほど1-2秒の成分が少なかった,要は,地震動が「弱かった」からです.決して,建物の揺れに対する耐震性がもう充分ということではありません.

 地震動に1-2秒の成分が出るかどうかは,震源特性や表層地盤によって決まり,首都直下地震では,その可能性があるとされています.

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