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台湾南部の地震(2016/2/6)で記録された地震動の応答スペクトル

 応答スペクトルがこちらに公開されました.

 減衰定数が記されていないのですが,5%とすると,ほぼ概算した通りです.即ち,最も大きな震度6を記録したCaolingの卓越周期は,0.7秒程度で,1-1.5秒応答は,(概算の0.51gよりやや小さく)0.4g程度です.

 倒壊した16階建マンションと同じ台南市の記録(Tainan City)も傾向は似ています(両者の位置関係は下図の通り)が,卓越周期は,台湾の建物(8割以上が鉄筋コンクリート造)に大きな被害を与える1秒程度が卓越しており,1-1.5秒応答はCaolingと同じ0.4g程度で,これは,東日本大震災で震度6強を記録したものと同程度か僅かに小さいくらいの値です.

2/8'16
台湾南部の地震(2016/2/6)で記録された地震動について

 こちらに波形(画像のみ)と地動最大加速度(PGA),地動最大速度(PGV)が公開されています.最も大きな震度6を記録したCaolingのPGA, PGVは,それぞれEW成分で344.12cm/s2,38.67cm/sです.

 これらの値から2πPGV/PGAを計算すると,0.71秒となり,卓越周期はそれほど短くなく,それなりの破壊力(1-2秒応答)をもった地震動である可能性があります.

 まだ波形(デジタルデータ)が公開されていないので,あくまで大雑把な推定ですが,5%減衰の加速度応答スペクトル形状を三角形(ただしピークの2倍より長周期では一定),ピークでの応答倍率を3倍として,1-1.5秒応答を求めると(0.344*2*0.42/0.71*0.42/2+0.341*0.5)/0.5=0.51gとなり,この値は,1995年兵庫県南部地震のJR鷹取(2程度)の1/4程度,2004年新潟県中越地震のJMA小千谷(1程度)の1/2程度,2011年東北地方太平洋沖地震のK-NET塩竈と同程度(例えば,ここ)なので,決して小さいものではありません.

 1999年台湾集集地震の解析によると,中低層RC造建物に大きな被害を与える周期は1秒程度であり,卓越周期が0.71秒だとするとそれに近いことにもなります.

 台南市の倒壊した16階建マンションの中から一斗缶が出てきたり,鉄筋の量が少ない(横補強筋がないところもある)などの施工不良が大きな要因の一つとは言えますが,それが原因の全てと決めつけるのには,地震波形の解析を待つ必要がある(被害の大きさは,建物の強度と地震動強さの大小関係で決まるが,現段階では,地震動強さは,それほど小さくない可能性もある)でしょう.

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