6/18 22:22に発生した山形県沖の地震について,6/19 12時現在,発生した地震動と被害との関係で言えることを,以下のようにまとめておきます.
1. 発生した地震動は,0.5秒以下の極短周期の成分が大きかったが,全壊,倒壊といった建物の大きな被害に結びつく1-2秒の成分は小さかった.
2. 0.5秒以下の極短周期地震動が発生した場合,建物の一部損壊,部屋の中の家具が倒れる,屋根瓦がずれる,ブロック塀が倒れるといった被害が生じる.
3. 震度は,人がどれだけ強い揺れと感じるかを測っており,1秒以下の短周期が対応する.そのため,0.5秒以下が強かった今回の地震では,震度6強という大きい震度を記録した.このことは,震度の大きさは,必ずしも,全壊,倒壊といった建物の大きな被害と対応しないことを意味する.
4. これは,よくあるケースで,震度6弱以上の地震動の8〜9割を占める.
5. 以上のことから,今回の震度6強の地震で,全壊,倒壊といった建物の大きな被害がなかったからと言って,建物の耐震性能が高いというわけではなく,1〜2割の確率で発生する1-2秒の地震が起これば,震度6弱でも全壊,倒壊する可能性がある建物も数多く存在すると考えれる.
となります.
1.についての応答スペクトルなどの詳細は,
・山形県沖の地震(2019/06/18)で発生した地震動をご覧ください.応答スペクトルや,各周期帯の震度,あるいは,これらを総合した提案震度を見ると,今回の最大震度は,震度5弱〜5強程度のもので,実際に起こった被害も本来の震度の定義と対応します.
3.については,
境有紀, 神野達夫, 纐纈一起, 建物被害と人体感覚を考慮した震度算定方法の提案, 第11回日本地震工学シンポジウム論文集, CD-ROM, 2002.11.
4.については,
江藤大貴,境有紀,地震動の周期特性による発生割合の定量的な検討,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造II,457-456,2017.8
で詳しく発表しています.
今回の地震で,どうして0.5秒以下の極短周期の成分が大きく,建物の大きな被害に結びつく1-2秒の成分は小さかったかを地震動発生のメカニズムから説明すると以下のようになります.
1. 発生する地震動は,震源と地盤構造の組み合わせによって決まる.
2. 震源については,マグニチュードが大きいほど長周期化しやすく,M7クラスがもっとも1-2秒を出しやすい.
3. 今回の地震は,M6クラスであったため,震源から短い周期が多く出たと考えられる.
1.については,
中澤駿佑,境有紀,建物被害に影響を与える深部地盤構造および震源のパラメータの検討,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造II,163-164,2017.8
で詳しく発表しています.