長周期地震動について
 
どうも1/18あたりからホームページへのアクセスが増えてるなー,1/17(1995
年兵庫県南部地震が起こった日)でテレビなどでいろんな地震災害の特集など
をやっているからかな,と思っていたんですが,1/20のNHKスペシャルの再放
送(本放送は1/18)を見てぴんと来ました.それで「長周期地震動」で検索を
かけると私のホームページが一番最初に出てきました.
 
簡単な模型と振動台を使って,長周期地震動と短周期地震動の違いをわかりや
すく?示したデモンストレーションで紹介している「長周期地震動」とは,1
秒以上にパワーがある地震動,という意味で使っています(中身の文章を読め
ばわかりますが).ですから,石油タンクのスロッシングや超高層建物に影響
を及ぼすという5〜10秒というのは,もっと長い周期です.
 
この辺の呼び方は,地震動研究者と構造物研究者によって違っています.地震
動研究者は1秒程度はやや短周期と呼びますが,構造物研究者にとって短周期
とは,もっと短い0.5秒以下の周期を指します.つまり,構造物研究者と地震
動研究者にとっての地震動の卓越周期の「長短」に大きな開きがある,つまり,
地震動研究者と構造物研究者の間に地震動に対する認識に関する大きなギャッ
プがあります.このことは何を意味するかというと,両者の間に「深い溝」が
ある,ということです.
 
NHKスペシャルの中で入倉先生が地震災害を減らすためには地震動研究者と構
造物研究者がもっと連携しないといけない,と話しておられましたが,その通
りだと思います.こういうちょっとした地震動の「呼び方」においてすら両者
はもっているイメージが違うのは,両者が「連携」していない1つの現れです.
私は地震動と構造物の両方をやっているので,その辺のところを嫌というほど
痛感しています.
 
入倉先生は,国は被害が起こらないと重い腰を上げないともおっしゃっていま
したが,それも全く同感です.私も現在の震度の問題点と代替案の提案を行っ
ています.私なりに働きかけもしているのですが,なかなか思うようには行き
ません.提案する震度算定法に関するQ&AのA3でも書いていますが,災害が起
きてからでは遅いのです.
 
ちなみに5〜10秒の長周期地震動については,提案する震度算定法に関するQ&A
のA5で言及しています.そこでも書いていますが,今回の十勝沖地震が起こる
前からそのような地震動が発生することは,予測されていました.そして,関
東平野,濃尾平野,大阪平野などの大都市圏でそういう地震動が発生すること
も予測されていますし,実際に観測もされています.
 
NHKスペシャルの中では,石油タンクのスロッシングとともに超高層建物にも
大きな影響を及ぼすと紹介されていましたが,実は,免震建物も該当します.
免震建物の中にはもちろんいろんなものがありますが,主として「周期を伸ば
す」ことと「減衰を付加した」ものが多いです.「免震」という名前からは,
地震の揺れから「免れている」という印象を受けますが,空中に浮かない限り
そんなことは不可能です.実際には,「普通の」地震動は5秒以上の長周期に
はパワーがないので,周期を伸ばすことで揺れを低減する効果を狙っているわ
けです.ですから,5秒以上の長周期地震動のようなものが来れば,逆に応答
が大きくなってしまうことも考えられるわけです.
 
もちろん,免震構造を研究したり,設計,施工している人達も5秒以上の長周
期地震動の存在を知らないはずはないですから,減衰を付加したり,耐力に余
裕を持たせたりして工夫はしています.しかし安易に「周期を伸ばす」という
ことは,5秒以上の長周期地震動という危険にさらされることになるので注意
が必要だと思います.石油タンクや超高層建物は「結果として,ある意味仕方
なく」長周期の構造物になっているのに対して,免震建物は「わざわざ」そう
しているのですから.

トップページへ