京都大学防災研究所
社会防災研究部門
都市空間安全制御研究分野

建物によって構成される都市・生活空間を対象として,地震の揺れによる被害,地震や津波による火災被害の推定,予測に関する研究をしています.詳しくは,以下のリンク先をご覧ください.

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■研究テーマの概要

・地震動の性質と建物被害の関係に関する研究

 地震の揺れ(地震動)による建物被害は震度が大きくなれば大きくなるという単純なものではなく,地震動の様々な性質,特に周期特性の影響を受けます.そこで,どういう性質の地震動が建物に大きな被害を引き起こすかについて,地震発生直後に地震観測点周辺の調査を行って被害データを収集して分析したり,地震応答解析を行ったり,振動実験を行ったりして検討しています.

↑東日本大震災と阪神・淡路大震災の地震動の比較(振幅も大きく継続時間も長い震度7の東日本大震災の地震動では周辺にほとんど被害はない一方,阪神・淡路大震災の震度6強の地震動では周辺で59.4%の木造家屋が全壊した)

・現存する建物の耐震性能に関する研究

 建物は人間が設計し建設するものですが,出来上がった建物がもつ耐震性能はよくわかっていません.そこで,構造図面や様々なデータを分析したり,実大木造建物の振動実験などを行ったりすることで,現存する建物の耐震性能を把握する研究をしています.

↑実大木造建物の振動実験の様子

・地震発生直後の被害推定,将来発生する地震の被害想定に関する研究

 地震動の性質と建物被害の関係に関する研究の成果と現存する建物の耐震性能に関する研究の成果を組み合わせて,地震発生直後にどこで大きな被害が生じているかを,きめ細かく高い精度で推定する研究をしています.また,将来発生する地震について,コンピュータを使った大規模計算を行って予測地震動を計算し,分析することで,どういう震源や地盤構造のときに建物に大きな被害を引き起こす地震動が発生するか,つまり,具体的に将来どこで大きな被害を引き起こす地震動が発生するかを突き止めようとしています.

↑将来発生する地震の震度分布(従来の計測震度ではどちらも大きな値になっているが,被害と対応した1-1.5秒震度では,上町断層でのみ大きな被害が生じる結果になっている)

・地震火災の予測手法の高度化と消防活動計画への展開

 巨大地震時には,市街地で複数の火災が同時に発生し,水道管や貯水槽が損傷することで,消し止めることのできない火災は,大規模な延焼火災に発展する可能性があります。特に,強風時の火災では,燃焼領域から発生する巨大な火災気流が市街地を這うように流れ,風下側の避難者の行動を阻害し,高温ガスの吸入による気道熱傷をもたらします。また,燃焼建物から発生する多数の火の粉が強風によって風下側に飛散し,遠く離れた建物で飛び火が発生すると,消防隊の活動は一層困難になります。

 首都直下地震といった将来の巨大地震によって発生する地震火災を予測し,それによる人的被害の評価や消防活動計画の有効性を評価するための理論的で実証的研究を行っています。

↑地震による建物構造被害と火災延焼被害の一貫シミュレーション

・津波火災の予測手法の開発と建築・都市への影響評価

 津波に起因して発生する火災を「津波火災」と言います。2011年の東北地方太平洋沖地震津波では,津波の浸水域で100件を超える火災が発生し,一部が大規模な延焼火災に発展しました。特に,津波火災が津波避難ビルや非浸水市街地,林野,船舶に延焼した事例が複数確認されており,津波火災がもたらす人的被害や二次火災の危険性が明確になりました。

 南海トラフ地震津波といった将来の巨大津波によって発生する津波火災を予測し,津波避難ビルといった建築や都市全体への影響評価と被害低減方策を導くための理論的で実証的研究を行っています。

↑津波による石油流出火災シミュレーションと津波避難ビルの火災被害予測に関する研究

(旧)川瀬研究室のページ