CESMDにUSGSから公開された波形の地動最大加速度,地動最大速度および計測震度を以下に示す.
観測点名 | PGA | PGV | 計測震度 |
---|---|---|---|
KATNP | 166.6 | 93.7 | 5.06 |
地動最大加速度(PGA)は,さほど大きくなく,震度5強相当であるが,地動最大速度(PGV)は,100cm/s近くで,かなり大きい(地動最大速度(PGV)が大きくなった理由は下に記述).
一目見てまずわかるのは,周期3〜6秒のやや長周期成分が卓越していることである.その大きさは石油タンクのスロッシングによる火災を引き起こした2003年十勝沖地震のK-NET苫小牧を遥かに超えており,最大速度298cm/sを記録した1999年台湾集集地震の石岡の記録に匹敵する.
しかしながら,この周期帯は,日本の超高層や免震建物の周期に対応し,中低層の組積造が多いネパールの建物に被害を与えるものではない.最大速度が大きくなったのもやや長周期成分が卓越したためで,最大速度が大きいから大きな被害になったという説明は当たらない.
中低層組積造は,弾性周期が短い上に靱性能も低いため,被害を与える周期は,1秒以下の短周期,あるいは,0.5秒以下の極短周期で,日本の木造や中低層非木造建物の被害と対応する1-2秒よりは,1秒以下と対応した震度の大きさで被害を説明するのが適当である.
この強震記録の震度は5強相当なので,それでこれだけの被害になったのは,耐力や靱性能が低い組積造建物が多かったからではないかと推察される.実際,多くの組積造が被害を受ける一方で,しっかり設計施工されたものは,ほとんど被害を受けていないという報告もある.
ただし,北海道大学の高井先生らが設置した地震計の中には震度6弱相当を記録したものもあり,場所によっては,大きな震度の揺れが発生したところもある可能性がある.
ここで使用した記録は,暫定的に公開されたもので,設置状況などは不明なので(ただし,やや長周期成分が卓越していることや震度レベルなど,他の強震記録と整合している点は多い),今後検討をして行く必要がある.
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