A11. 提案する震度算定方法は被害「率」を対象としており,住宅密集地では被害を受ける建物の「数」は確かに増えますが,被害「率」は変わりません.震度は被害率で定義されている(すべき)ものなので(1995年以前の震度も例えば震度7は家屋の倒壊率が30%以上というように被害「率」で定義されています),被害「率」が変わらなければ震度も変わらないことになります.

 しかし地震防災上,被害「率」を対象としていいかどうかは,重要な問題です.都市部では半径200m以内に何千棟もの家屋が存在する場合もあり,一方都市部以外では町役場周辺でも半径200m以内に数十棟程度ということもあります.例えば半径200m以内に都市部では家屋が2000棟,都市部以外では50棟存在するとすると,家屋の倒壊率が例えば5%の場合,倒壊家屋の数は,都市部では100棟,都市部以外では2,3棟となりその差は歴然です.家屋ではなく人命,即ち,被害率ではなく死亡率ということになると事態はより深刻で,死亡率のみで判断すると,人口が密集している都市部の人命の重さは,都市部以外のそれより軽いなどという,とんでもないことになってしまいます.

 しかしそれでも私は震度は,被害「率」あるいは死亡「率」を対象とすべきと考えています.それは地震動の「強さ」は被害「率」あるいはそれに伴って引き起こされる死亡「率」としか相関がないからです.つまり地震動の情報からは被害「率」しか予測することができないのです.地震は自然現象であり,大きな揺れが発生するところに人がたくさん住んでいるかどうかなど地球が知るはずもありません.

 実際問題として,建物あるいは人口密集度に従って震度を変えるのは不可能でしょうし,エリア的には都市部は日本のごくごく一部にすぎず,地震は都市部,都市部以外区別無く起こるのですから,都市部を基準にするのは都市部に住む人の奢りと言われても仕方ないでしょう.

 しかし,地震防災上は被害「率」だけではなく,被害「数」も重要なのは言うまでもありません.そういう場合は,震度を変えて対応するのではなく,例えば都市部以外では震度6から大がかりな対応をするが都市部では震度5からそれを行う,というように,地震直後の対策マニュアルで対応するのが現実的だと思います.

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