提案する震度算定法に関するQ&A

 提案する震度算定法に関して様々な場所で,もうかなりの回数お話させていただくことができ,いろんな貴重な意見をいただいてきました.取り入れさせていただいたものもありますし,ゆずれないものもあります.また,時間の関係で充分なお答えができなかった場合も多々ありました.しかし最近になって,まだまだ私の努力が足りず,同じような質問が繰り返されることに気がつきました.そこで,今までいただいた質問を大まかにまとめ,その回答という形でここに掲載させていただきたいと思います.

 現在提案している震度算定法は暫定的なものです.低震度(4以下)の決め方,建物の建設年代を考慮に入れて歴史地震とのキャリブを行うこと,震度5に中小被害の影響を考慮すること,木造家屋の地方性などまだまだやらなければならない作業がたくさんあります.こういう形で提案する震度をインターネット上で公開する目的には,多くの人の意見に素直に耳を傾け,幅広くコンセンサスが得られるようなものにしていきたいということがあります.このホームページをご覧になって,メールなどでご意見をお聞かせいただければ大変うれしいです.


Q1. 被害を予測する指標を提案するのはわかるが,なんで震度を変えようとするのか?震度は今のままで,被害との相関がなくてもよく,被害と相関がある指標を別に作ればいいのではないか?

A1. 私も最初はそう思っていました.しかし,今の社会的状況を考えると,震度を変えるのが現実的だと思うようになってきました.つづき


Q2. 今の計測震度は安全側に出ているのだからそれでいいのではないか?安全側に出ているのだから,6弱→5強というように全体をシフトすればいいのではないか?

A2. 現在の震度が安全側に出ているのは,短周期が卓越した地震動が発生する地震が続いているからであって現在の震度は安全側(=大きめに出る)ではありません.つづき


Q3. 提案する震度は建物の耐震性能に依存するのではないか?例えば,これから建物の耐震性能が向上したり,高層建物が増えたりすると,対応できないのではないか?また,耐震性能が低かった戦前の建物を対象とした歴史地震の記述とは対応していないのではないか?現在の計測震度は,旧震度の「出力」による定義から,地震動のみから決まる「入力」による定義に改正されている点で優れているのではないか?

A3. まず提案する震度は高震度が1〜2秒の,低震度が0.1〜1秒の弾性応答を基にしていますので,地震動が決まれば全く一意的に決まります.即ち,現在の計測震度と同様に全く「入力」のみから決まります.つづき


Q4. 震度が主として対象としている木造家屋は地方性が強く,地方によって耐震性能が異なるので,いろんな地震の強震記録+周辺被害データをまとめて処理するのは問題なのではないか?

A4. その通りだと思います(思っていました).つづき


Q5. 提案している震度は応答スペクトルを基にしているのでシンプルさに欠けるのではないか?また地動最大加速度,地動最大速度のように物理的意味も明確でないのでは?

A5. まず,現在の計測震度の算定方法は非常に複雑で理論的背景も明確ではないと思います.つづき


Q6. 提案する震度は木造家屋や中低層建物を対象としているので,その他の構造物,例えば高層,超高層建物,免震建物,土木構造物には使えないのではないか?

A6. その通りです.そのような構造物には使えません.つづき


Q7. 提案している震度はアイデアとしては別に新しくないし,求め方もスペクトル強度と同じでは?

A7. その通りです.つづき


Q8. 震度6等の高震度が多く観測されるようになったのは,強震観測ネットワークが整備されて,母数が増えたからではないか?局所的に大きな揺れとなることもあり,そういうものも拾われている可能性がある.例えば震度6が3地点で観測されたら,震度6にする,などにすれば現在の計測震度でいいのではないか?

A8. 提案する震度は,強震記録とその半径数百mの周辺被害データに基づいています.つづき


Q9. 現在の計測震度に使われているフィルターを修正すれば,被害と対応するようにできるのではないか?

A9. やってみました.つづき


Q10. 低震度に応答スペクトルを用いるのは意味があるのか?現在の計測震度でいいではないか?

A10. 低震度で現在の計測震度を使うことには,全く異議を唱えていません.つづき


Q11. もし現在の震度で6強あるいは6弱の地震が東京などの住宅が密集した都市部で起これば,6強あるいは6弱に相当する大きな被害が出るのではないか?

A11. 提案する震度算定方法は被害「率」を対象としており,住宅密集地では被害を受ける建物の「数」は確かに増えますが,被害「率」は変わりません.つづき


Q12. 2003年5月26日に発生した宮城県沖を震源とする地震や7月26日に発生した宮城県北部を震源とする地震で,大きな被害はなく震度5レベル以下とのことですが,そんなことはないのではないでしょうか?瓦屋根の被害は多数出ていますし,自治体の統計データによると家屋も多数全壊しています.揺れの大きさも今まで経験したことがないほどのもので,あれで震度5以下というのは納得いきません.

A12. これは震度の定義,即ち,例えば震度6弱はどういう被害がどれだけ出るのかという定義の問題であり,どう定義すべきかという問題でもあります.つづき

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