第2回震度研究会議事録
                            作成:神野達夫
 
1. 日時:平成15年7月30日 14:00〜18:00
 
2. 場所:東京大学 地震研究所 第2会議室
 
3. 配布資料:
  ・宮城県北部の地震(2003年7月26日00時13分〜)(西宮)
  ・AN EXPRESSION OF SEISMIC INTENSITY IN TERMS OF
 
 
  ・防災学に必要な地震動入力尺度について考える〜震度のフィルター特性
   の検証を通して〜(岡田)
 
4. 出席者:
  太田裕、岡田成幸、神野達夫、纐纈一起、境有紀、西宮隆仁、座間信作、
  藤原広行、畑山健(オブザーバー)(五十音順敬称略)
 
5. 打合せ内容
(A)今回よりメンバーとなった、座間、西前、西宮、藤原について境より紹
   介があった。
 
(B)西宮より2003年7月26日00時13分の宮城県北部の地震の概要について報
   告があった。
  ・メカニズム解が旭山撓曲と合わないように見える。
   >CMT解を見るともう少し合っているように見えるが、それほど大き
    な違いはないだろう。
 
(C)境より2003年7月26日00時13分の宮城県北部地震の被害調査の報告があ
   った。
  ・本震で6強を記録した観測点周辺の被害は、
   >鳴瀬:あまり大きな被害はなかった。
   >矢本:瓦の被害、道路の陥没、ブロック塀の被害は多く見られる。
   >南郷:観測点から2km程度離れた地域に全壊建物がいくつかある。
   >いずれも被害レベルは震度5以下であった。
  ・鹿島台は本震時6弱であった。
  ・鹿島台の震度計は停電による不具合が見られた。
  ・河南町広渕は震度計は設置されていないが、6弱相当の被害であったか
   もしれない。
 
(D)岡田より「震度判定に係る問題点の整理」についての話題提供があった。
  ・震度とはどの程度の範囲の代表値なのか?
  ・本来、周期帯によって影響を及ぼす物が異なるはずであるが、計測震度
   は1種類のフィルターを用いている。
  ・行政対応における震度の活用方法にも問題があるのではないか?
   >被害と一致しない震度は好ましくない。
   >被害率だけではなく絶対数も問題なのではないか?
   >旧震度階は低震度側では狭い範囲、高震度側では広い範囲を対象とす
    るように記述してある。計測震度もこれを踏襲しているようだが、や
    はりある地点のデータであると思うべきである。
   >解説表は十分な資料が集まれば、変更の可能性はあるが、震度算定の
    アルゴリズムはそういうものではない。
   >鳥取県西部地震の際、震度が大きかったのに被害がなかったのは建物
    が強かったと主張する人がいるか、これが本当なのかの判断はできな
    い。
   >次世代の震度算定方法を試すような仕組みを作ってデータを蓄積する
    ことが重要である。
   >観測点の設置状況が悪く震度の発表ができない観測点があり、これら
    に対して順次移設を行っている。
   >これに対して硬い岩盤上に設置してあるため市街地よりもかなり小さ
    な震度を記録する地点も存在する。
   >人口密集地など震度を知りたい地点に震度計を設置しなければ意味が
    ない。
   >震度計、地震計の設置状況を見直し、それぞれの状況に応じて設置状
    況の良し悪しの指標を設けるべきである。
   >強震動予測では過去の地震の震度分布を用いて検証を行うことがある
    が、現行の計測震度は過去のものと連続性がないので一緒には使えな
    い。
   >地震動強さの指標の根拠となるものは時代によってその対象が変わる
    ものと変わらないものがあるが、できれば不変的なもの(人体感覚や
    自然構造物など)を対象に決めるべきであろう。
 
(E)神野より「計測震度と建物被害の対応性−計測震度が危険側となる場合
   −」について話題提供があった。
  ・兵庫県南部地震では震度が危険側の判定(震度で想定される被害よりも
   大きな被害がある)を行った例があった。
  ・人工地震波を用いて震度が危険側の判定を行う地震動の特徴を検討した
   結果、1秒以上の応答がそれよりも短周期の応答よりも大きい場合に震
   度は危険側の判定を行う傾向がある。
  ・最近頻発している震度6以上の地震動は短周期が卓越しているため、震
   度が安全側の判定を行っている。
   >平均すると1年に2回程度震度6以上を記録していることになるが、
    この位の頻度で震度6があると防災訓練的にはちょうどいいとの見方
    もできる。
   >本来は震度と被害状況を一致させ、震度5強くらいから行政対応を行
    うようにするべきである。
 
(F)境より「応答スペクトルを用いた震度算定法」について話題提供があっ
   た。
  ・前回の研究会で発表した震度階を低震度側と高震度側の2段階に分けて
   震度算定を行っていたが、今回は中小被害と平均応答の関係を明らかに
   して、中震度の算定を加えた3段階とした。
   >中小被害を半壊を対象として定義すると、D3となる。
   >中小被害は被害率(被害関数)ではなく、損傷度関数を用いるべきで
    はないか?
   >震度は時系列を追って算定されるべきではないか?
   >リアルタイム的に処理できないと地震計や震度計には載せられない。
   >応答スペクトル算出の周期刻みを少なくすることや応答スペクトルで
    はなくフーリエスペクトルを用いることで算出時間を短縮することは
    可能である。
 
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