※現在の震度の問題点とその代替案を先にお読み下さい
提案する震度算定法は,震度の高低によって対象を変化させて対応させることを目指しています.なぜなら,対象を固定してしまうと,例えば,震度5以下では建物の大きな被害は全く生じず,一方,人は震度5を越えると揺れの強さの違いを判別できなくなるなど,カバーできる震度の範囲が限定されてしまうからです.特に,震度6以上の高震度は,地震直後の迅速な対応に使われるため人命の損失に繋がってしまう大きな建物被害と対応する必要があります.具体的には,次のように震度を高低で3つの領域に分けて,それぞれを
・低震度(震度5程度以下)では,現行の計測震度というように対応させることを目指しています.
このように震度の高低によって対象を変化させるには,対応する地震動の周期帯を震度の高低によって変える必要があります.現行の計測震度,建物の中小被害,建物の大きな被害と対応する地震動の周期帯を調べた結果,
・現行の計測震度 :0.1-1秒という結果が得られました.計測震度と対応した0.1-1秒という周期帯は,人体感覚(人が揺れを強いと思うかどうか),室内物品の動きに対応しています(岡田,2001,翠川・福岡, 1988).
そこで,これら3つの周期帯の平均速度応答を用いて震度の定式化を行いました.以下がその結果です.式は河角式と同様,logの1次式という非常にシンプルな形になっています.
IL=1.936*log(VL)+2.011 ここで,VL:0.1-1秒平均速度応答(水平3方向合成,減衰定数5%),
VM:0.5-1秒平均速度応答(水平2方向合成,減衰定数5%),
VH: 1-2秒平均速度応答(水平2方向合成,減衰定数5%),
IL:0.1-1秒震度,IM:0.5-1秒震度,IH: 1-2秒震度
0.1-1秒震度は現行の計測震度とほぼ対応しており,0.5-1秒震度は建物の中小被害,即ち,木造家屋の全半壊率が震度4.5で1%,6.0で50%となるように(岡田・鏡味, 1991),1-2秒震度は,建物の大きな被害,即ち,木造家屋の全壊率が震度5.5で1%,6.0で8%,6.5で30%となるように(岡田・高井, 1999)設定されています.0.5-1秒震度,1-2秒震度と実際の被害データに基づく全半壊率,全壊率の対応関係は下図の通りで,相関係数で0.8以上とよく対応しています.
これらは,地震動の周期成分を0.1-1秒,0.5-1秒,1-2秒という3つの周期帯で「震度」という統一の指標で見比べることができるもので,0.1-1秒震度が大きければ計測震度,即ち,人が強いと感じる地震であった,1-2秒震度が大きければ建物の大きな被害が生じる地震であった,などという見方ができます.
最終的には,これら3つの震度を組み合わせて震度IPを計算します.
詳しくは,境有紀, 神野達夫, 纐纈一起, 震度の高低によって地震動の周期帯を変化させた震度算定法の提案, 日本建築学会構造系論文集,第585号, 71-76, 2004.11.をご覧ください.以下にプログラムを公開します.
プログラム本体:tsi.forプログラムは使用も改造も自由ですが,その結果を使ったものを報告書,論文などに公表される場合は,メールで結構ですからご連絡ください.引用文献は,
境有紀, 神野達夫, 纐纈一起, 震度の高低によって地震動の周期帯を変化させた震度算定法の提案, 日本建築学会構造系論文集,第585号, 71-76, 2004.11.
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参考文献