7/24'05
千葉県北西部の地震(2005/7/23)で発生した地震動

地震発生日時 : 2005年7月23日 16:35頃
震源位置   : 千葉県北西部 (北緯35.5度、東経140.2度)
深さ     : 約90km
マグニチュード: 5.7

各地の震度(震度5弱以上)
・震度5強
東京都 東京足立区伊興
・震度5弱
東京都 東京大田区本羽田,東京江戸川区船堀
埼玉県 草加市高砂,鳩ケ谷市三ツ和,八潮市中央,三郷市幸房,宮代町笠原
千葉県 市川市八幡,船橋市湊町,浦安市猫実,木更津市潮見,木更津市役所,鋸南町下佐久間
神奈川県 横浜神奈川区神大寺,横浜神奈川区白幡上町,横浜中区山手町,横浜中区山田町,横浜中区山下町,横浜港北区日吉本町,横浜緑区白山町,川崎川崎区宮前町,川崎川崎区中島,川崎幸区戸手本町
※気象庁発表の情報による

 波形が公開された防災科学技術研究所K-NETおよびKiK-netによる地動最大加速度,地動最大速度および計測震度を震度5弱以上のものを対象として,既往の強震記録と比較して以下に示す(今回はKiK-netで震度5弱以上を記録したものはなかった).

    観測点名       PGA   PGV  計測
                       震度
    CHB003       214.3  14.7  4.79←K-NET白井
    CHB007       140.6   8.8  4.56
    CHB008       124.6  20.3  4.78←K-NET浦安
    CHB009       123.8  13.0  4.48
    CHB015       174.9  21.1  4.96←K-NET木更津(震度5強)
    CHB019       102.9  13.3  4.55
    CHB028       153.0  14.1  4.52
    KNG001       152.0  18.7  4.89
    KNG002       119.1  13.4  4.53
    TKY023       117.8  12.5  4.40
    福岡西方福岡舞鶴  331.4  70.2  5.72
    兵庫県南部JR鷹取  742.7  161.9  6.49
    三陸南JMA大船渡  1106.9  32.2  5.84
    新潟中越JMA小千谷  973.3  98.6  6.34
※PGA: 地動最大加速度(cm/s2),PGV: 地動最大速度(cm/s),いずれも水平2方向ベクトル和



       K-NET位置図

 全部で10点で震度5弱相当以上を記録し,K-NET木更津(CHB015)で震度5強相当を記録している.地動最大加速度は最も大きいもの(K-NET白井,CHB003)で200(cm/s2)を越えるがそれ以外は100〜200(cm/s2)程度である.地動最大速度は,最も大きいもの(K-NET木更津,CHB015)やK-NET浦安(CHB008)で20cm/s程度である.

 K-NET木更津(CHB015,震度5強),K-NET白井(CHB003,震度5弱),K-NET浦安(CHB008,震度5弱)の加速度波形(水平2方向ベクトル和最大方向)を示す.

 K-NET木更津
 K-NET白井
 K-NET浦安

 K-NET木更津(CHB015,震度5強),K-NET白井(CHB003,震度5弱)の弾性加速度応答スペクトル(減衰定数5%,水平2方向ベクトル和)を過去の強震記録と比較して示す.



 いずれも1秒以下の短周期が卓越しているが,K-NET木更津は0.5〜1秒に卓越周期があり,一方,K-NET白井は0.5秒以下の極短周期にピークがあって,周期特性はやや異なることがわかる.ただし,建物の大きな被害を引き起こす1-2秒の部分は1995年兵庫県南部地震のJR鷹取,2004年新潟県中越地震のJMA小千谷よりはるかに小さく,2005年福岡県西方沖地震の福岡舞鶴よりも小さいが,K-NET木更津は,震度6弱を記録した2003年三陸南地震のJMA大船渡と同レベルであることがわかる..

 提案する算定法による震度を以下に示す.提案する算定法による震度は,0.1-1秒(計測震度=人体感覚,室内物品の動きに対応),0.5-1秒(建物の中小被害に対応),1-2秒(建物の大きな被害に対応)という3つの周期帯ごとの地震動強さを震度という共通の指標で見ることができるものである.

    観測点名     計測 0.1-1秒 0.5-1秒 1-2秒  提案
             震度  震度  震度  震度   震度
    CHB003      4.79  4.81  4.15  3.87  4.81
    CHB007      4.56  4.53  3.93  3.51  4.53
    CHB008      4.78  4.62  4.37  4.40  4.62
    CHB009      4.48  4.51  4.15  3.89  4.51
    CHB015      4.96  4.96  4.65  4.28  4.96
    CHB019      4.55  4.59  4.34  4.30  4.59
    CHB028      4.52  4.56  4.12  4.09  4.56
    KNG001      4.89  4.85  4.62  4.33  4.85
    KNG002      4.53  4.64  4.35  4.03  4.64
    TKY023      4.40  4.53  4.22  3.85  4.53
    兵庫県南部JR鷹取 6.49  6.10  5.78  6.63  6.63
    三陸南JMA大船渡  5.84  5.67  4.97  4.73  4.97
    新潟中越JMA小千谷 6.34  6.35  6.03  6.03  6.03
    福岡西方沖舞鶴  5.72  5.62  5.33  5.58  5.37

 全体に被害に結びつく1-2秒より0.1-1秒という計測震度が対応する短周期における値が大きく,今回の地震による地震動も震度の大きさの割には被害を引き起こさない短周期地震動であったことがわかる.

 0.1-1秒震度と1-2秒震度の関係をプロットして既往の強震記録と比較する.



 45度の線より左上にくれば,0.1-1秒より1-2秒にパワーがある,即ち,震度の割には大きな被害となる,45度の線より右下にくれば,1-2秒より0.1-1秒にパワーがある,即ち,震度の割には大きな被害とならないことを意味する.今回の地震動は,全て45度の線より右下に来ていて,左上に来ている兵庫県南部地震のような1-2秒にパワーがあって大きな被害を引き起こすタイプのものではなかったことがわかる.しかしながら,中には45度の線に近いものもあり上述したように,0.1-1秒に比して1-2秒のパワーもある地震動もあったことがわかる.

謝辞

 強震記録は,防災科学技術研究所,気象庁,鉄道総合技術研究所,NTTファシリティーズより提供いただきました.また,観測点位置図はK-NETのページより転載させていただきました.

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