地震動解析レポートは,地震発生直後に公開されるK-NET即時公開データを用いて,被害がどの程度生じていると推定されるかという観点から地震動の性質を分析したものです.PGA(地動最大加速度),PGV(地動最大速度),計測震度など,一般に用いられる地震動強さ指標,加速度波形,応答スペクトルに加えて,建物の大きな被害と対応した1-2秒震度なども公開しています.つまり,発生した地震動がどのような性質のものか,単に震度の大小ではなく,建物被害に大きく関係する周期特性を見ることができます.
応答スペクトルを見ると,地震動にどの周期の成分が含まれているか,そして,その成分の大きさがわかります.建物の大きな被害を引き起こした阪神・淡路大震災,震度は大きかったにも関わらず,建物の大きな被害は限定的だった東日本大震災などの過去の地震動との比較もしています.
そして,この周期特性を震度という形で指標化したものが,0.1-1秒震度,0.5-1秒震度,1-2秒震度です(提案震度はこれらを総合したものです1)).0.1-1秒は,計測震度とほぼ対応していて,1秒以下の短周期の揺れの大きさ,つまり,人がどれだけ強い揺れだと思うかがわかりますし,屋根瓦がずれる2),ブロック塀が倒れる,室内物品が動く,ひび割れが入るなどの被害が増えます.斜面崩壊などもこの周期成分の影響が大きい3)という検討結果があります.
1-2秒は,建物の大きな被害と対応していて,この値が大きくなると(例えば,震度6弱に対応した5.5以上,震度6強に対応した6.0以上になると),建物の大きな被害が生じている可能性があります.
0.5-1秒震度は,0.1-1秒と1-2秒の間の周期ですが,この値が大きくなると,非構造部材の被害,構造体のひび割れ,室内物品の動きなどの被害が出やすいのは,0.1-1秒と同様ですが,この値が非常に大きくなると,耐力が高くて周期が短い木造建物に被害が出ることがある4)ので注意が必要です(例えば,2016年熊本地震のKiK-net益城周辺5)).
震度や地震の揺れと被害に関する基礎知識もよろしければご覧ください.
1) 境有紀, 神野達夫, 纐纈一起, 震度の高低によって地震動の周期帯を変化させた震度算定法の提案, 日本建築学会構造系論文集,第585号, 71-76, 2004.11.