超縮小モデルの振動実験見学のご案内

 速報が下の方にあります.

 防災科学技術研究所,建築研究所と共同で,超縮小模型を用いた簡易振動実験手法 の適用実験として,1995年に行われた実大3層の振動実験を1/5,1/8,1/15と3通りに縮小した振動実験を行います.1/15の試験体は高さ何と60cm!(RC建物としてはおそらく世界新記録?)です.下の写真で左から1/5,1/15,1/8の試験体,立っているのが4年生の梶原君といっしょに担当してくれている大学院生の小杉君で,身長は165cmです.後ろに見えるのが震動台です.

 超縮小模型を用いた簡易振動実験手法のコンセプトは,横補強筋の代わりに補強繊維を使うことにより,鉄筋コンクリート造建物について従来不可能だった縮小率を実現し,これまで行うことのできなかった高層建物や地震動をパラメータとした振動実験を可能にする,ということです.今回は,実大の実験が行われた比較的単純な3層建物について,縮小モデルで実大と同様の挙動,破壊性状が得られるかどうかを検証する開発実験です.予定は以下の通りです.

7/29(金) 1/5試験体加振
8/01(月) 入れ替え
8/02(火) 1/15試験体加振
8/03(水) 入れ替え
8/04(木) 1/8試験体加振

 もし見学を希望される場合は境(ここにメルアドがあります)までご連絡ください.場所はつくばの防災科学技術研究所の震動台です.いずれの試験体も最終破壊に至る加振は14時から行う予定です.ただし,何もかもが初めて尽くしの実験で,予定通り行かないこともありますのでその点はご了解ください.変更があった場合は適宜このページでお知らせします.

■1/5試験体の速報


↑ちゃんと表示されない場合は再読込してみてください.それでもだめならRealPlayer(無償版がページの右の方にあります)をダウンロードしてみてください.それでもだめならIEを使ってみてください(ブラウザがIEでないなら)

 今年度のシリーズは,横補強筋の代わりに補強繊維を用いた縮小モデルで実大の建物と同様の挙動を再現できるかを検証するものですので,入力地震動は,実大と同じ1968年十勝沖地震の八戸港湾EW成分600Gal.相当のもの(縮小しているので時間軸と振幅を調整しています)です.

 途中で1階柱脚のネジ鋼が破断して「飛び上がる」ほどの応答となりました.縮小モデルで使用しているネジ鋼(市販されているものでは付着の取れる細径の鋼材はネジ鋼しかありません)は普通の鉄筋に比べると破断歪度が小さい,付着が良すぎてネジ山とネジ山の間に歪が集中するなどの問題点が浮き彫りになりました.ただ,ベースシア−頂部変位を見ると,1階柱脚が破断した点(ロードセルの鉛直荷重でだいたいわかります)までは実大のものとほぼ同様の挙動を示していました.最終ひび割れ状態は,2,3階の梁に曲げひび割れ,1階柱脚と1階柱頭にも曲げひび割れが見られ,3階梁にはひび割れは見られないという実大とはやや異なるメカニズムでしたが,これは途中で1階柱脚のネジ鋼が破断したためだと思われます.実大試験体で見られた小梁の影響については,2階の直交ばりに損傷があり,その影響が縮小モデルでも見られました.いずれにしてもこれから詳細な検討をすることになります.

■1/15試験体の速報


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 試験体があまりに小さくて,しかも測定治具の陰になっていてちょっと見にくいかもしれませんが,今回は,実大試験体と同じく見事に梁端と1階柱脚にヒンジができるメカニズムを形成しました.試験終了後の様子です↓.変形角にして1/30もの残留変形が残っています.実大試験体に見られた直交梁の損傷も見られました.

 試験体の撤去↓.2人で運べます(左が技官の小島さん,右が小杉君).

 鉄筋には丸鋼(2Φ)を使用しています(ネジ鋼まM3までしか市販していないので仕方なく丸鋼を使いました)ので,1/5試験体のようにネジ鋼が破断することもありませんでした.ネジ鋼を使用すると1/5試験体のような問題点も出てくるので,付着がとれれば丸鋼を用いた方がいいかもしれません.過去の柱の実験(ここに文献があります)によると丸鋼を用いた場合とネジ鋼を用いた場合にさほど大きな復元力特性の違いは見られませんでした.丸鋼,それも針金のようなものを用いることができるのならば,更に縮小率を上げることも可能です.現在の縮小率の限界はネジ鋼で一番細いものがM3,棒鋼で一番細いものが2Φという条件から決まっています.もちろん特注で作ることも可能ですが,簡易振動実験は手軽に試験体を作れることを目指していますので,現段階では市販されている材料を用いて試験体を製作しています.

■1/8試験体の速報


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 デジカメでの録画が操作ミスで途中からになってしまいました.もちろんビデオにはちゃんと記録しています.今回も1/15試験体,実大試験体と同じく見事に梁端と1階柱脚にヒンジができるメカニズムを形成しました.梁端から直交梁に至るひび割れ↓

 1階柱脚のひび割れ↓

 ただし,今回も応答変形(応答変形角)は実大よりかなり大きくなりました.ただし,一自由度系を使った応答解析結果とはほぼ対応しています.また,1/8試験体はネジ鋼を使っているにもかかわらず,1/5試験体のように1階柱脚のネジ鋼が破断することもありませんでした.どうもよくわからない結果がいくつかあります.これから詳細な検討を行います.

■おまけ

 現在の研究室メンバー(+共同研究者の防災科学技術研究所の松森さん)です(後ろは1/5試験体).後列左から今村君,飯塚君,梶原君(以上,工シス4年),大月君,前列左から小杉君(以上,シス情1年),境(教員),松森さんです.小杉君と梶原君がこの実験の主担当をしてくれています.今日は実験で汚い格好をしているけど,普段はもっときれいにしています(と学生は主張しています).

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