学校などの整形な鉄筋コンクリート造建物を用いて地震動強さを推定する方法の提案

 1995年兵庫県南部地震以降,強震観測点の整備は進みましたが,その密度はまだ充分とは言えません.実際,2003年宮城県北部地震では,大きな被害を受けた地域が局所的で,そこでの地震動強さや震度はわかっていません.

 そこで,学校などの整形な鉄筋コンクリート造建物に着目しました.学校建物の特徴としては,

・ほぼ一定間隔(1kmメッシュに1つ)で存在している
・鉄筋コンクリート造なので地域によらず均質である
・整形なので解析が容易である
・被災度判定による定量的な被害レベルの評価ができる

などが挙げられます.地震動強さは,建物の損傷度が大きいほど,建物の強度が高いほど大きいと考えられるので,整形な学校建物の建物の損傷度と建物強度が把握できれば,地震動強さが「建物損傷度×建物強度」の関数として表現できるのでは?と考えたわけです.

 まず建物強度は,以下の式で求まるベースシア係数Cyを用います.

 次に建物損傷度は,被災度判定から求まる損傷割合Dを元に変形角Rを以下の式から計算します.地震直後に使用する場合など迅速な対応に用いるときは,大破,中破などの大まかな判定をし,Rはその真ん中の値を使う,といったことも可能です.

 以上の方法でCyとRを計算すれば,これを

 に代入すれば,被害と対応した震度が求まります.

 求める手順をフローで示すと以下↓のようになります.

 実際の被害から求めた震度と学校建物から求めた震度との対応です↓

 に代入すれば,計測震度も求まりますが,計測震度そのものが被害との相関があまり高くないので,被害との対応が低くなることに注意する必要があります.

 詳しくは,

小杉慎司, 境有紀, 建物被害に対応した地震動強さを損傷を受けた整形な鉄筋コンクリート造建物から求める方法, 第12回日本地震工学シンポジウム論文集, 2006.11.

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