■地震の概要と各地の震度

■発生した地震動と予想される被害

　強震観測点で発生した地震動は，体感，非構造部材の被害，室内物品の動きに対応した0.5秒以下の極短周期が卓越しており，全壊などの建物の大きな被害を引き起こす周期1-2秒応答は小さく，強震観測点周りでは建物の大きな被害は生じていない事が予想される．．

■自治体震度計による強震記録の性質【New】

　観測点周りの調査を行った自治体震度計の強震記録の性質について解析しました．K-NET, KiK-netの記録と同様，発生した地震動は，体感，非構造部材の被害，室内物品の動きに対応した0.5秒以下の極短周期が卓越していて，震度は大きくなるものの，全壊などの建物の大きな被害を引き起こす周期1-2秒応答は小さいものでした．

■被害調査速報

　震度６弱以上を記録した全ての強震観測点と５強を記録した一部の強震観測点周辺の被害状況の調査，具体的には，観測点から半径200mの円内の建物（駐車場，作業所，倉庫などは被害率算定の対象外，ただし調査は行う）の被害レベル，構造種別，階数の全数調査を行った．

　　　　　　　　　　　　　　　　　各観測点の位置

・各観測点周辺の様子

　K-NET信濃（震度５強）（調査日:11/26(水)）
　長野市戸隠震度計（震度６弱）（調査日:11/26(水),11/27(木)）
　小谷村中小谷震度計（震度６弱）（調査日:11/27(木)）
　K-NET白馬（震度５強）（調査日:11/27(木)）
　小川村高府震度計（震度６弱）（調査日:11/27(木)）
　長野市鬼無里震度計（震度６弱）（調査日:11/27(木)）

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以上の６観測点に加えて，建物の全壊・倒壊といった大きな被害が多数出ていると報道されていた，長野県白馬村神城の堀之内地区を訪れた．なお，この区域では地震記録が取れていないことから，悉皆調査は行っていない．

　長野県白馬村神城堀之内地区（調査日:11/27(木)）

最も近い観測点であるK-NET白馬からは約5km程離れている

　　　　堀之内地区の位置（Google mapを使用させていただきました）

■まとめ

　調査の結果，強震観測点周辺では事前の予想通り，大きな震度を記録したにも関わらず建物の大きな被害は生じていなかった．これは，発生した地震動が0.5秒以下が卓越した極短周期地震動で，1秒以下と対応した人体感覚を測る震度は大きくなるものの，建物の大きな被害と相関のある1-2秒応答が小さかったためである．調査したエリアの建物は，豪雪地帯のため屋根に重い瓦があまり使われていない事も一因と考えられるが，2005年福岡県西方沖地震や2009年駿河湾の地震でも同様の現象が見られており，短周期が卓越したという地震動の性質が主たる原因と考えるべきだろう．

　このように，発生した地震動が被害を引き起こさない性質のものだったために，強震観測点周辺を含めて全体としては被害は限定的なものとなったが，長野県白馬村神城の堀之内地区で，局所的に全壊・倒壊といった大きな被害を受けた建物が多く見られた．この地域の建物の耐震性能が特に低い様には見えず，付近に地震計が無いため記録は取れていないが，1-2秒応答が大きい地震動が発生した事が予想される．局所的にこのような地震動が発生した原因については，表層地盤や震源の影響が考えられるが，今後の検討が必要である．

謝辞
調査の際，現地の方々には被災されていたにも関わらず，調査にご協力をいただきました．一刻も早い復興をお祈り申し上げます．強震記録は，防災科学技術研究所，気象庁，鉄道総合技術研究所より提供いただきました．

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