■発生した地震動の性質
防災科学技術研究所と気象庁で公開された強震記録の性質について検討した.地動最大加速度(PGA),地動最大速度(PGV),計測震度を以下に示す.
観測点名 PGA PGV 計測K-NET輪島,K-NET能都,K-NET穴水,K-NET富来の4点で500cm/s2を越える大きな地動最大加速度を記録している.また,K-NET穴水,JMA能都では100cm/s程度の非常に大きな地動最大速度,K-NET富来,JMA輪島,JMA志賀でも50cm/s以上の大きな地動最大速度を記録している.
強震観測点の位置加速度波形と加速度応答スペクトル(水平2方向ベクトル合成)を示す.
↑加速度波形 ↑加速度応答スペクトル(水平2方向ベクトル合成)観測点によってその周期特性が大きく異なることがわかる.K-NET穴水,JMA輪島,K-NET七尾,JMA能登では1-2秒程度の「やや短周期」が卓越している一方で,K-NET能都,K-NET富来,K-NET輪島では0.5秒以下の極短周期が卓越していることがわかる.1-2秒程度の「やや短周期」が卓越したもの中で,K-NET穴水,JMA輪島は,振幅も大きく,大きな被害と相関が高い1-2秒のスペクトル値が大きくなっていて,実際に周辺では大きな被害が生じた.JMA能登,K-NET七尾でもやや短周期が卓越しているがそのスペクトル値は大きくない.
K-NET穴水,K-NET輪島,K-NET富来の加速度応答スペクトル(水平2方向ベクトル合成)を3つを過去の被害地震の強震記録と比較して以下に示す.
K-NET穴水は1秒程度のやや短周期が卓越しており,加速度応答スペクトルを見ても大きな被害を引き起こす1-2秒の領域のパワーは,1995年兵庫県南部地震のJR鷹取ほどではないが,2004年新潟県中越地震のJMA小千谷以上であり,大きな破壊力をもっていることがわかる.
提案する算定法による震度を以下に示す.提案する算定法による震度は,0.1-1秒(計測震度=人体感覚,室内物品の動きに対応),0.5-1秒(建物の中小被害に対応),1-2秒(建物の大きな被害に対応)という3つの周期帯ごとの地震動強さを震度という共通の指標で見ることができるものである.
観測点名 0.1-1秒 0.5-1秒 1-2秒 提案0.1-1秒震度と1-2秒震度の関係をプロットして既往の強震記録と比較する.
45度の線より左上にくれば,0.1-1秒より1-2秒にパワーがある,即ち,震度の割には大きな被害となる,45度の線より右下にくれば,1-2秒より0.1-1秒にパワーがある,即ち,震度の割には大きな被害とならないことを意味する.今回の地震で発生した地震動は,45度の線より左上に来るものもある一方で,右下に来るものもあり,その周期特性が様々であることがわかる.全壊家屋19%という甚大な被害が見られたK-NET穴水,全壊家屋5%という被害が見られたJMA輪島はいずれも45度の線より左上に来ていて,震度が大きいのみならず,震度の割に大きな被害を引き起こす地震動が発生したことがわかる.K-NET七尾は左上に来ているが震度レベルが低いので大きな被害を引き起こすものではない.ただし,JMA能登は震度レベルも高くなっていて被害が生じてもおかしくないが,実際には大きな被害はなかった.JMA能登はK-NET能都と300mほどしか離れていないにも関わらず,その周期特性には大きな違いがあるのはやや奇異であり,詳細に検討を行う必要がある.
謝辞強震記録は,防災科学技術研究所,気象庁,鉄道総合技術研究所より提供いただきました.