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阪神・淡路大震災から15年

 あの1995年兵庫県南部地震,阪神・淡路大震災から15年が経ちました.1つの節目ということで,学会やメディアなどでいろんなことが企画されています.10年経ったとき,即ち,今から5年前にも書きましたが,あれほどの大惨事が時とともに急速に忘れられるのは驚くべきことで,そうならないために,そういう企画がなされるのは重要なことです.でもそれだけでは厳しいと思います.

 15年ということで,私も今思うことを書いておこうと思って書き始め,5年前に書いた記事を読み返してみました.そして,5年前と状況がほとんど変わっていないことに,新たに書くことはそんなにないことに気づき,愕然としました.いったいこの5年間,何をやってきたのでしょうか?

 現状では,1995年兵庫県南部地震と同様の地震がまた発生すれば,残念ながら,あのときのような大惨事が繰り返されます.場所が今後30年以内に発生する確率が70%(驚くべき高い確率です)とされている首都直下ならもっと大変なことになります.高速道路の橋脚のように1995年兵庫県南部地震を契機に補強されたものもありますが,阪神・淡路大震災で大半の命を奪った既存不適格建物(現行の耐震規定を満たしていない建物)は,大量に放置されたままで,その数は1000万棟以上と言われています.つまり,2棟に1棟近くの木造建物が大地震が来れば倒壊の危険性があるという驚くべき現状なのです.

 しかし,アンケート調査を見ると多くの人は自分の家は大丈夫と思っていることに驚かされます.つまり,「事実誤認」しているのです.

 ここで新たに書くことは特にないのですが,5年前に書いた記事の中で,特に何を強調するかというと,あえて,地震災害は天災ではなく人災ということを繰り返し申し上げておきたいと思います.厳しいことを言うようですが,対策する術があるのに対策しないのは,そこに住んでいる人の責任です.日本の耐震技術は世界一です.でも使わなければ宝の持ち腐れです.

 あのときの大惨事を忘れないように記憶に留めておくことはもちろん重要なことですが,じゃあどうするのかという具体的な対策をとらない限り大惨事は繰り返されます.戦争は人間が起こすものですが,地震は自然が起こすもので,ある日突然,容赦なく襲いかかってきます.ひょっとしたら明日かもしれません.

 これは,結局,本能で防災してはいけないということに繋がるのだと思います.滅多に来ない非常に大きな恐怖を無視しようとする本能に従えば,対策は絶対に進みません.

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