福岡県西方沖地震の被害と震度に関するいくつかの報道について

2005年福岡県西方沖地震の私(境)が関係した報道について,やや誤解を招きやすいところがあると思いましたので,ここで説明しておこうと思います.

まず今回発生した地震動の破壊力が「5強」?という報道がいくつか見られましたが,正確な表現ではありません.震度は1996年より計測震度に変わっており,被害などの現象を基に計算しているものではありません.具体的にはだいたい0.1〜1秒という周期帯の地震動強さを測っているもので,地震動の性質によっては,即ち,それ以外の周期帯のパワーが違えば被害が出たり出なかったりします.気象庁震度階級関連解説表はあくまで参考情報であり,気象庁サイドの見解としてもその注意事項の中で

「震度が同じであっても、対象となる建物、構造物の状態や地震動の性質によって、被害が異なる場合があります。この表では、ある震度が観測された際に通常発生する現象を記述していますので、これより大きな被害が発生したり、逆に小さな被害にとどまる場合もあります。」

とはっきり明記してあります.

即ち,同じ「震度6弱」でも今回のように被害がさほど生じない場合もある一方,甚大な被害が生じる場合もあるということです.計測震度は揺れの強さを表す1つの目安と考えるべきで,被害と対応するかどうか,対応すべきかどうかはまた別の問題です.上の注意事項に「地震動の性質によって、被害が異なる場合がある」とあるように,今回の2005年福岡県西方沖地震で発生した地震動は,「震度6弱」でも被害が小さくて済む性質の地震動だった,ということです.ですから,私が一番言いたいのは,「震度6弱」でも今回のように被害がさほど生じない場合もある一方,地震動の性質によっては,例えば,1995年兵庫県南部地震のJR神戸駅周辺のように甚大な被害が生じる場合もある(震度6弱で家屋全壊率16.1%)ので,「震度6弱ってこの程度なのか」などと決して安心しないでください,ということです.

それから,「被害がさほどでもなかった」というのは,地震動の記録がとれたところを指しています.具体的には,福岡県西方沖地震で発生した地震動と被害速報で載せている震度計や防災科学技術研究所の観測点のある九州本土で,それ以外の,例えば玄界島は対象としていません玄界島では甚大な被害が生じています.しかし,玄界島の本震の記録はないので,どれだけの強さの地震動であったか,震度はいくつか,どういう性質の地震動であったかは直接知ることはできません.ですが,被害の大きさから見れば非常に強い揺れだったことは間違いありません.

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