今回の地震で発生した地震動は,2008年岩手・宮城内陸地震,2008年岩手沿岸北部地震と同様に0.5秒以下の極短周期が卓越していて,震度や地動最大加速度は大きく,体感,非構造部材の被害,室内物品の動きは大きくなるが,人命の損失に繋がる全壊などの建物の大きな被害を引き起こす1-2秒応答は小さい.提案する算定法による震度を見ると5弱程度である.よって,建物の大きな被害は生じていないことが予想される.
■被害調査速報
震度6弱以上を記録した全ての強震観測点と5強を記録した一部の強震観測点周辺の被害状況の調査,具体的には,観測点から半径200mの円内の建物(駐車場,作業所,倉庫などは被害率算定の対象外,ただし調査は行う)の被害レベル,構造種別,階数の全数調査を行った.
・各観測点周辺の様子
JMA御前崎市御前崎(震度6弱)■まとめ
調査の結果,地震発生直後の予想通り,震度6弱以上を記録した強震観測点から半径200m以内に全壊,大破といった建物の大きな被害は見られなかった.しかしながら,瓦屋根のずれといった軽微な被害は非常に多く見られた.構造物は被害を受けると周期が伸びることから,被害レベルは地震動の周期と相関があり,瓦屋根の被害も地震動の短い周期と相関があるため,0.5秒以下の極短周期応答が大きかった今回の地震では,軽微な被害が多かったと考えられる.
今回の地震で大きな被害が生じなかったのは,0.5秒以下の極短周期が卓越するという地震動の性質が原因であり,決して建物の耐震性が高いためというわけではない(静岡県の木造建物の耐震性能は全国平均より低いという報告もある).近い将来発生が危惧されている東海地震では,より大きなマグニチュードが想定されており,震度がより大きくなり,更に,地震動の周期はマグニチュードの大きさと相関がある(ω-2則),あるいは,想定震源域がスラブ内ではなくスラブ間であるため,建物の大きな被害を引き起こす1秒よりやや長い周期が卓越する地震動が発生することも考えられる.今回の地震で震度6弱で建物の大きな被害がなかったからと言って耐震対策を怠ることがあってはならない.
謝辞