簡単な模型を使って長周期地震動と短周期地震動の違いを
わかりやすく?示したデモンストレーション

 最新版をこちらに公開しました

 「簡単な模型と振動台を使って,長周期地震動と短周期地震動の違いをわかりやすく?示したデモンストレーション」を振動台を使わず,机の上でもデモンストレーションできる模型を作成しました.実はもう半年以上前の専攻公開のときに作成し,実演したものです.

 地震動(地震による揺れ)は,単に強い,弱いと言った単純なものではありません.素速い揺れ(短周期),ゆったりした揺れ(長周期)が複雑に混ざっています.そしてその混ざり方は,震源や表層地盤の影響などによって,素速い揺れが卓越する場合,ゆったりした揺れが卓越する場合があります.具体的には,例えば震源がプレート間の場合や表層地盤が軟らかい場合などには比較的長い周期が卓越し,震源がプレート内の深い地震の場合や表層地盤が固い場合などには短周期が卓越すると言われています.地震動の周期帯は次のように呼ばれています.

 極短周期  : 0.5秒以下
 短周期   : 0.5〜1秒
 やや短周期 : 1-2秒
 やや長周期 : 2-5秒
 長周期   : 5秒以上

 ここでは,木造家屋や中低層鉄筋コンクリート造など世の中の多くの建物の被害や人の感じ方が関係する極短周期地震動(0.5秒以下)とやや短周期地震動(1-2秒)の比較をデモンストレーションします.動画で,右の小さい(アンパンマン)人形が人間,左の4本柱でできたものが建物を模擬しています.人形(人)は,人が揺れが強いと感じる極短周期で倒れるように,建物模型は,実際の木造住宅および中低層鉄筋コンクリート造建物(これで全体の80%以上を占める)が壊れるときの周期とほぼ同じ周期になるようにしてあります.右の液晶ディスプレーには震度(相当値)が表示されます(5−は5弱,5+は5強).


動画1 極短周期地震動(4Hz,周期0.25秒)

動画2 やや短周期地震動(1Hz,周期1秒)

 ※うまく行かない場合は■極短周期■■やや短周期■をそれぞれ右クリックして対象をファイルに保存(A)」を選びファイルをダウンロードしてください.Windows Media Playerで再生できます(スタート→プログラム(P)→アクセサリ→エンターテイメント→Windows Media Player).

 これを見ると極短周期地震動(上),やや短周期地震動(下)ともに震度5弱〜5強程度と震度は同じくらいにもかかわらず,極短周期地震動は人形は倒れる(人は強い地震と感じる)が建物は無被害,やや短周期地震動は,人形は倒れない(人は強い地震とはあまり感じない)のに建物は倒壊する,という具合に,震度が同じでも地震動の周期特性によって人の感じ方や建物被害が大きく違ってくることがわかります.このことは気象庁震度階級関連解説表にもはっきり明記してあります.そして,言うまでもないことですが,怖いのはやや短周期地震動(1-2秒)です.下の動画で見るとものすごい振幅で揺れていることがわかります(でも震度は上の動画と同じ程度).甚大な被害を引き起こした1995年兵庫県南部地震や2004年新潟県中越地震の川口町ではまさにこういう地震動が観測されました.1995年兵庫県南部地震では震度6弱でも周辺で16%の家屋が全壊したところ(JR神戸駅付近)もあります.つまり昨今の,震度6弱,6強で被害が小さい場合が非常に多いのは,たまたま極短周期地震動だったというだけで,建物の耐震性が充分というわけではなく,決して安心してはいけないということです.

 なお,極短周期地震動(0.5秒以下),やや短周期地震動(1-2秒)に加えて,2003年十勝沖地震で石油タンク火災を引き起こし,関東平野,大阪平野,濃尾平野などの堆積盆地で発生が危惧されているいわゆる長周期地震動(5秒以上)のデモンストレーションもこれに加えたいと思っています(乞うご期待?).

謝辞

 このような机の上でもできるデモンストレーションは,名古屋大学の福和伸夫先生が既に行われているもので,そのアイデアに触発されてこのデモンストレーションを思いつきました.福和先生にお話ししたところ,快くお許しをいただきました.

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