これまで大きな震度,具体的には,原則として震度6弱以上を記録した強震観測点全てを対象として,周辺(観測点から半径200m)の建物全数調査を行ってきた(被害調査方法と目的はこちら.過去の調査結果はこちら).しかしながら,今回の地震では,震度6弱を越える強震観測点数が200を越え,一研究室で調査を行うことは極めて困難であること,地震動の解析により,震動による構造物の大きな被害がさほどでもないとが推測されることから,絞り込みを行って調査を行った.絞り込みのフィルタの概要は以下の通り.
・震度が高いものを優先する
・波形が公開された,あるいは,公開される可能性が高いものを優先する
・航空写真などの予備調査により,周辺にある程度の建物が存在するものを優先する
具体的には,3/15時点で,
・震度6強以上の場合は,周辺に20棟程度以上の建物が存在するもの,
・震度6弱の場合は,波形が公開された,あるいは,公開される可能性が高い
K-NET, KiK-net, JMAの観測点で,周辺に100棟程度以上の建物が存在するもの
とした.ただし,周辺建物数については,観測点の移設などから事前の調査と実際のものと相違があるものがいくつかあった.更に,福島第一原発の立ち入り規制エリア内のもの,津波被害を受けていると推測される観測点(具体的には,K-NET釜石とK-NET石巻.ただし,K-NET石巻は,観測点の設置状況のみ調査を行った)を除いた以下の35点について,調査を行った.
調査結果の速報を以下に示す.コメントはこちら.ただし,数値などは暫定的なもので,後日変更されることがある.
K-NET鉾田(兼 鉾田市当間震度計,震度6強,計測震度: 6.41)(調査日: 3/16)調査した観測点の位置(Googleマップを使用させていただきました)
コメント
震度6弱,6強,あるいは,7という非常に高い震度を記録したにも関わらず,周辺(半径200m以内)に大きな建物被害は少なかった.最も被害が大きかった須賀川市八幡町震度計,次に大きかったJMA大崎市古川三日町でも,全壊・大破率にして数%程度で,それ以外は,全壊・大破建物はほとんどなかった.原因としては,発生した地震動が1秒以下の短周期が卓越しており,建物の大きな被害に結びつく1-2秒応答がさほどでもなかったことが考えられる.