2004年10月23日の夕刻,新潟県中越地方を震源とする地震が発生した.本震の震度計で最大震度7を記録し,その後,震度6強を2回(通算3回),6弱を2回記録している.最大震度6弱以上を記録した地震は以下の5回.
地震発生日時 D M 震度6弱以上の観測点そこで,これらの強震記録を用いた地震応答解析を行って1995年兵庫県南部地震などの既往との比較を行う.そして,これらの強震観測点周り(半径200m以内)の建物被害調査を行い,地震動の性質と建物被害の関係について検討を行う.
以下は,地震応答解析結果および被害調査の速報である.今回の地震での被害で最もひどかったのは,崖崩れ,道路の陥没などの地盤被害だった.至る所で道路が寸断され,移動が非常に困難だった.今まで行った10数回の被害調査の中でもこれほど移動に苦労したことはなかった.建物の被害も崖崩れによる家屋の全壊が多かった.
しかしながらそれとは対照的に,地震動による建物被害は,震度の大きさの割 に少ないという印象をもった.それは,昨年の三陸南地震,宮城県北部地震,2001年芸予地震でもそうであった.現在の震度算定法が0.1〜1秒という短周期に重きを置いているために,今回のように,短周期が卓越する地震動が発生すると震度が過大になってしまう.逆に,建物の大きな被害を引き起こす1〜2秒というやや長い周期帯が卓越した地震動が発生すると震度が過小に評価される危険性もある.
本来の震度7は家屋の全壊が30%以上(1995年兵庫県南部地震の震災の帯),震度6強は家屋の全壊が10〜30%,6弱でも1〜10%という甚大な被害である.例えば,想定される東海,東南海,南海地震ではマグニチュードが8クラスと大きく,1〜2秒というやや長い周期にパワーをもった地震動の発生する可能性が高い.1995年兵庫県南部地震のように直下地震であっても震源メカニズムによって1〜2秒が卓越してしまうこともある,「本物の震度6,7」が来る前に,被害を的確に予測できるように震度算定法を再考すべきと考えている.
なお,以前と比べて震度観測点が増えたため大きな震度を記録する点が増えたという説明は当たっていない.なぜなら,もしそうであるならばそのような観測点の周りでは,それに対応する大きな被害が局所的に生じていることになるが,実際に被害調査を行った結果では,そのような大きな震度を記録した観測点周りでも対応する被害は生じていないからである.
末筆ながらに被災された方々にお見舞い申し上げますとともに,生活道路,ライフラインの復旧が1日も早く行われて,早期に元の生活に戻れることを心より願っております.
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